牛深で製造された雑節は長年、県内外のメーカーや卸業者に出荷されてきました。削り節や調味料として加工され、一般家庭はもちろん、大手うどん店をはじめとする飲食店や、関西のカップうどんなどにも用いられています。
知らず知らずのうちに日本の食卓を支えてきた牛深の雑節。ですが、天草では長い間、「牛深産の雑節」が消費者の目にふれることはほとんどありませんでした。近年になってようやく6次産業化やOEMに取り組む事業者が出始め、削りや粉末など食卓に取り入れやすい最終商品が続々誕生。「牛深産の○○節」が島内外に流通するようになりました。
そうした生産者の努力に呼応するように、大学などの教育・研究機関、自治体や金融機関などがタッグを組み、認知度向上や販売促進の取り組みが行われています。(写真は2017年の熊本大学と熊本県立大学のCOC事業の一環で行われた、牛深の雑節に関する研究報告会の模様)
道の駅や物産館だけでなく、島内や県内の飲食・宿泊施設などでも、地域産品として牛深の雑節を使ったメニューや商品を提供する事業者も少しずつ、増えてきました。
そして、雑節産地にある「牛深高校」では、「総合的な探求の時間」という授業の一環で、高校生による雑節ラーメンの開発に挑戦する生徒たちも登場。数ヶ月かけて研究を重ね、地元のおまつりでお披露目された雑節ラーメンには、試食ブースに大行列ができるほど。地域の皆さんの期待が垣間見えました。
これからの、雑節
インナーブランディングによる組織力の強化を目的に、「節等生産者連絡協議会」と「天草海部」の共催で行われた伝道師のワークショップには、生産者や地域の飲食店経営者、行政、金融機関等の姿も見られ、地域産業としての関心の高さがうかがえます。企業間連携や販路拡大、地域の子どもたちの学びの場、体験型観光の受け入れ、インターンシップなど、伝道師のポテンシャルは無限大です。
食文化だけでなく、歴史や環境、地域など、さまざまな分野につながる雑節。うまみの相乗効果で深みを生み出す雑節のように、これからも多くの革新と調和が広がっていきそうです。
牛深のみなと文化と雑節(その1)
牛深のみなと文化と雑節(その2)
牛深のみなと文化と雑節(その3)
(文責/だしソムリエ 木下真弓)