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秋の天草は、いつにも増して饒舌です。赤や黄色に色づく葉っぱや、おいしそうに熟れた木の実を見つけるたびに、野山の草木が「私はここよ」と囁きかけているようで、ついつい足を止めてしまいます。
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ふと足元に目をやると、深く明るい黄色の花。光沢のある丸い葉っぱの間から顔を出す「石蕗(つわ)の花」は冬の季語にもなっていますが、木漏れ日のそそぐ林床に咲き誇るその姿を見つけるたびに、胸にあかりが宿る気持ちになるのはきっと私だけではないはずです。
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ところで、天草と熊本の2拠点生活をしながら各地を行き来するなかで、特に際立って感じるのは、天草と他所の山容の違い。阿蘇や人吉、水俣などは三角錐の集合体で構成されている山が多いのですが、天草諸島の山はひとつひとつの突起が丸みを帯びていて、まるでブロッコリーの巨大な花束のよう。さらに四季折々の変化が見られる山が多い気がしています。その違いはなんだろう?と思って調べてみると、そこには森林のなりたちの違いがありました。
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熊本県の調査によると、天草諸島の総面積87,839haのうち、森林面積は57,976ha。島の66%は森林で構成されており、その割合は県の平均を上回っています。さらに森林のなかでも、木材を生産する目的で人の手によって管理されている人工林は23,062ha、比率にすると40.6%(県の平均が60.8%)。つまり、天草の森林の6割近くが天然林であることがわかります。
熊本県の人工林の多くは、木目が真っ直ぐでやわらかく、乾燥や加工を施しやすいスギやヒノキ、マツといった針葉樹。これらは葉っぱが針状にとがっていて、大半は冬でも葉を落とさない常緑樹です。天草以外の多くの山が、一年を通して三角錐の集合体に見えていたのはそのためです。
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対して、ヤブツバキやイチイガシ、ホルトノキ、タブノキ、シイ、カシ、クヌギ、コナラといった広葉樹が存在感を放つ天草の森林では、平たい葉っぱが多く見られます。丸や楕円、しずく型やとがったものなどさまざまな形があり、色を変えたり葉を落としたりと一年のなかで変化をしていきます。天草の山々が全体的に丸みを帯びていて、春夏秋冬の山容が大きく異なる理由は、どうやらそこにあるようです。
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広葉樹の多い森林には、さまざまな生きものの命が宿ります。
蝶々や蛾の幼虫は、葉っぱや花を食べて育ち、成虫になると鳥や動物のいのちを支えます。花の蜜を吸うハチは、花粉を運んで受粉を助けます。スズメバチやカマキリなどは増えすぎた昆虫を食べてバランスを保ったり、新たな害虫が森林にやってくることを阻止する役割もあるそうです。
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アーティスティックな落ち葉の透かし絵をつくるのは、ミミズやダンゴムシ、ヤスデといった葉っぱを食べる虫たち。食べた葉っぱを土状の排出物として出すことで、森林の循環を担います。ダニなどの小さな生きものも、落ち葉を土に変える立役者です。
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また、落ち葉を裏返してみると糸状の菌糸が見られることがありますが、これらはカビなどの「土壌微生物」と呼ばれる細菌類の存在を示しています。土壌微生物は、土を炭素や酸素・窒素などに分解する役割を担う働きもの。根や葉から取り込みやすい物質をつくることで、草木のすこやかな生育をサポートし、森の循環を担います。
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広葉樹をはじめ、多様な樹木が共存する天草諸島の森林は、生物多様性や人と地球のあり方を肌で感じる、貴重な学びの場。森と楽しくつながる術や、海を育む森のこと、島のなかで受け継がれてきたひとと自然の調和が調和する営みついても、これから少しずつ考えて&伝えていきたいと思います。
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