天草飴本舗で見せていただいたのは、100年を超える飴きりバサミ。指2本で操る美容師のハサミを見慣れた私には、全部の指を入れて使うこのつくりがとにかく新鮮で、ハサミ鍛治の技術の細やかさに見惚れてしまいました。お許しいただき、手を入れてみると、とにかく絶妙なフィット感。鍛治で整えられた部分と、長年に職人さんの手によって馴染んだ部分とがあるように思えて、金物とは思えないやわらかさが愛おしくてたまらなかったのです。
「刃がきれいに重ならなりすぎないようにできているんですよ。練って伸ばした飴を切る作業は、紙などを切るのとは、負荷のかけ方が違うから」と持ち主の明瀬さん。いつもお使いで買いに行き、祖父母と一緒に味わったあの芋あめ。まるみを帯びた芋あめの形が、こうした道具で作られていたのですね。
数年前につくられなくなってしまった商品ですが、常連さんの中には今でも「あの飴はもうないの⁉︎」と尋ねる人もいるそうで。そのお気持ちすごくよくわかります。あの食感とやさしい味わい、今でも脳裏に浮かんできますもの。芋あめの技術を知るのは、明瀬さんとこのハサミだけ。記憶の奥に眠る味わいの歴史の一端に触れた気がして、涙が出そうになりました。飴きりバサミよありがとう。おつかれさま。
天草飴本舗 えすぽると
https://amaame.com/