天草西海岸フットパスへの道  〜助走〜 特別フットパス講座①

車で通るだけでは見落としてしまうような小さな発見や驚きがあり、
初めて会うはずのに、ずっと前から知り合いであるかのような温か
な出会いも叶えてしまうフットパス。歩くための道や歩き方をした
ためたマップは、地域を歩く人にとって道しるべとなるものですが、
コースを守らなければならないという厳密なルールはなく、スター
ト地点やゴール地点は自由。土地の人に会ったら積極的に話しかけ
たり、お店や気になる風景を見つけては寄り道や道草をするのが楽
しみだったりもします。
天草西海岸でフットパスコースをつくるなら、まずは地域の人たち
にもその意義や楽しさを味わっていただくことからはじめたい。そ
んな思いもあって12月4日の特別講座は、講演と歩く体験をセット
にした1日フルコースの企画となりました(前の記事はこちら→)。

まずはこの地域でやれるかどうかのお試し!ということで、ごくご
くちいさな呼びかけだったのですが、平日にも関わらず午前午後で
述べ29人の方々にお集まりいただくことができました。高浜、大江、
下田、福連木という天草町の4つの集落に加え、牛深の「南天草フッ
トパス」の武田さんや、天草・河浦・新和・有明の地域おこし協力隊の
皆さん、市役所の職員さん、そしてなんと湯島からご参加くださっ
た方も!「フットパスを知っている人」という呼びかけに10人を超
える人が挙手したことからも、関心の高さがうかがえます。



この日の予定は4部構成。第1部がフットパスについてのお話、第
2部で高浜集落をフィールドにしたフットパス的歩き方の体験を。
お昼をはさんで、第3部は歩いてみた後のフットパス講座、第4部
が大江集落をフィールドにしたフットパス的歩きかたの体験とい
うなかなか濃密なスケジュールです。

 

講師の井澤るり子さん。熊本県下益城郡美里町在住。地域に残る豊かな文化・景観を歩きながら楽しむ「フットパス」を各地に普及させ、地域の素晴らしさを伝えるインタープリターとして活躍中。2016年7月、フットパスの全国展開に向け「合同会社フットパス研究所」を起業し代表に就任。伝統行事や食農体験を通じた交流の場「だいとお加多蘭会」の設立、地域に残る石橋のガイド、ネイチャーゲームや森林活動指導など、地域振興や歩く文化の創造と普及に向け多方面で活動している。日本フットパス協会理事。美里町文化財保護委員会委員長、熊本県文化振興審議会委員。

高浜地域のコミュニティセンターをお借りして行った第1部。
外から訪れる人が今、求めているものとして井澤さんが語った
のは、以下の3つのことでした。

1. 地域らしさ(人の気配)
2. 地域の人との交流
3. 生活体験

観光地へ車でひょいと行き、目的のものを見て再び車に乗
って次の観光地へ。そんなドアtoドア?車to車?の旅では
決して満たされることのないものです。そして、これらを
味わう最たるものが、フットパス。ということで、まずは
味わっていただきたい「この地域らしさ」について、皆さ
んの見識を共有いただくことになりました。


夕陽、軒先ぶどうの風景、おかれる野菜に季節を感じる無人市場、
ガッツ、椿やアコウ・イチョウなどパワーをもらえる大きな古木、
高浜焼きの皿山の窯跡、石垣や石積み、秋の夕陽、ハマボウフウ、
古い家々が並ぶ風景、天草陶石や陶磁器の欠片が見られる海岸、
天草陶石を運び出す坑道、2万本の椿が自生する公園  etc.


どれもこれも、天草西海岸の自慢したいものばかり。そしてその
多くが、自然だけでなく人の営みのなかで生まれたものでした。
フットパスと自然歩道との大きな違いは、自然の雄大さだけでな
く人との出会いや、人の気配を感じることで、より豊かな時間を
味わえるという点。そうしたコースをつくるためには、地域の皆
さんとの対話が何より大切なのだといいます。ちなみに、美里町
のフットパスコースは完成までに2年の歳月をかけたとか。なる
ほど!だからあんなにも魅力的な道が生まれたのか!と心の中
でひそかに膝うちしたのでした。

アイスブレイクとして、生まれ月の順番に並び替え、5つのグルー
プにわかれて、いよいよ歩く時間です。

Scroll Up