「ミナメシばつくってくっけん。ちょっと待っとけな」
打ち合わせがつい盛り上がり、気づけばすっかりお昼どき。
「西平カメリアクラブ」会長の白迫さんは、そういうと
たたたっと外へ出て、ご自宅へ帰って行きました。
それから15分か20分くらい経ったでしょうか。
白迫さんが抱えてやってきたのは、
ダンボール箱に入った3つの丼。
湯気で曇ったラップをめくるとそこには
甘辛い醤油の香りを漂わせる
ホカホカのごはんがありました。
玉ねぎとともに炒めてあるのは、
天草で「ミナ」と呼ばれる貝の一種。
潮の引いた磯にペタッとくっついている
小指の先ほどの小さな巻貝で、
子どもの頃、磯遊びに出かけては取って帰って塩茹でし、
爪楊枝の先でクルンと取り出して食べるのが大好きでした。
ひとつひとつ取り出すのも結構な手間なので、
こんなにたくさんご飯にのっかっているのは私も初めてで。
ワクワクしながらいただきました。
とれたてのサラダ玉ねぎと合わせて炒め、
砂糖と醤油で甘辛く味付けされたミナは、
今まで食べたどのミナよりも、やさしく力強い味わいでした。
「こら、誰にでん食べさせられんと」と白迫さん。
東シナ海の厳しい波がうちよせる海岸で
冬の寒いなか集めたものを下茹でし、
ひとつひとつ殻から取り出す手間を考えると、
気が遠くなりそうです。
そんな特別なものを、こうしていただけるってすごいこと。
決して値段がつけられない西海岸のおごちそう。
「あんたちゃもう仲間だけんね」
そんな気持ちが込められているようで、
心にしみる味でした。