ある日の船上。
建網を引き上げるローラーの傍らで、
道具に目が釘付けになりました。
竹の筒に入っていたのは
鍵の形に曲げた金具を木の枝にくっつけたもの。
魚に傷をつけないように
網から外す道具です。
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(原文)
「おいさん、こいも手づくりな?」
「なん?どいかい?」
「こん、網よば外すと」
「じゃっと。なんでんわがでつくらんば」
「あよー、すごか」
「あって買うぇばじぇんじゃもね」
「そがんですねー」
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(意訳)
「おじさん、これも手作りですか?」
「なに?どれのこと?」
「この、網を外す道具」
「そう。(作れるものは)なんでも自分でつくらなきゃ」
「まあ!すごい!」
「だって買えばお金(が必要)だもの。」
「そうですよね」
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シンプルだけど手になじむ。
あるものを生かしてつくる漁師の手しごとに
無駄はありません。
漁師の仕事を助ける道具には
それぞれの魂とこの島々の歴史が宿っている。
そんなことを思った朝。