はじめて天草のことにふれる方たちのために、天草の島々の、いわゆる「はじめまして」のごあいさつ。これからお届けする小さなタネが、どんな場所で見つけたものなのか、まずはここから触れてみてください。

天草諸島は、熊本、長崎、鹿児島の3県に囲まれた、九州の西岸にあります。大小約120の島々で構成される天草は、自然が織りなす造形美にあふれています。巨大なアンモナイト化石や恐竜化石が出土した白亜紀以降の地層をはじめ、リアス海岸や奇岩、海食洞といった1億年の大地の記憶を刻んでいます。このことから、天草ジオパークに認定されました。

雲仙天草国立公園の海には、年間を通して定住しているイルカの群れや色とりどりのサンゴが生息しています。海のアクティビティも盛んで、ダイビングやシーカヤック、サーフィンなどファンにはたまらないスポットになっているようです。

また、天草の豊かな海を育んでいるのは、広葉樹がしげる森や、観海アルプスとも呼ばれる山々。海のイメージが強い天草ですが、深い森や山々のおかげで島の多様な生態系が育まれ、四季折々の豊かな表情を見せてくれているのです。

天草が九州本土と陸続きでつながったのは、50年ほど前のことです。橋でつながる前は、すべてにおいて海が玄関口だった天草。縄文・弥生・古墳時代の各遺跡から出土した遺物は古代から、島内外との交流や交易が行われていたことを示しています。鎌倉時代に入ると、入り江に広がる港町は国内外の船で賑わい、世界の文化が海を入口にしてもたらされました。南蛮文化とともに伝えられたキリスト教もそのひとつです。

江戸時代初期、重税や飢饉、信仰の弾圧など多くの困難にあえぐ人々が海峡を超えて団結・決起した島原天草一揆は、国内史上最大の一揆となりました。一揆後、幕府直轄の天領となった天草では人々に平穏を取り戻そうと多くの寺社が建立され、従来の信仰とともに、さまざまな祈りの文化が根づく島となりました。

行政区の変遷も相まって、多くの文化が混じり合う天草。町並みや衣食住のものづくりからも、そうした歴史の歩みがうかがえます。

漁業

内海、外洋と3つの海に囲まれた天草諸島では、伝統的な素潜り漁をはじめ、多様なスタイルの漁が今でも島の人々によって営まれています。豊富な魚種が水揚げされることから、練り物や干物といった加工品も多彩で、天草を代表する特産品です。和食に欠かせない雑節は、日本一の生産量を誇ります。

3つの海域の特長を生かした“育てる漁業”の分野では、サーモンやマグロ、ブリやタイ、牡蠣や海藻などの養殖が行われ、国内だけでなく、海外に輸出されています。

農業

天草特有の温暖な気候を生かした農業も盛んです。日当たりのいい山の斜面では晩柑やデコポンをはじめとする柑橘類、日本一早い新米として注目される稲作のほか、サツマイモやジャガイモ、レタス、インゲン、イチジクなど、年間を通じて、種類豊富な旬の野菜やフルーツを味わうことができます。畜産についても、地鶏の天草大王や、ブランド豚・牛肉も天草特産のものがあります。

豊富な食材と、国内外の交流の中で育まれてきた食文化が、島で暮らす人にも、旅行者として訪れる人にもおいしいひとときをもたらします。

林業

天草といえば海と思われがちですが、島の総面積の66%は森林です。50年かけて育まれたヒノキ林や、その質の良さから幕府の御用林として保護された樫の木をはじめ、シイやクスなどの広葉樹が生い茂る山容は、四季折々の美しさで人々を魅了します。

天然の水がめであり、ろ過装置の役割を果たし、多くの生きものを育む森。島の資源を守るための活動もつづいています。

陶石&陶業

天草の南部、いわゆる下島と呼ばれる島には、全長約13kmにもおよぶ鉱脈があります。大地の営みの中で生まれた純度の高い天草の陶石は加工しやすく、強くて美しい焼き物を生むことで知られ、古くから日本各地の陶磁器文化を支えています。

さらに、約30の窯元が点在する天草諸島では、個性あふれるつくり手たちによって透明感のある白磁から染付磁器、ぬくもりのある陶器など多種多様な陶磁器が生みだされています。

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