のさりのお盆。

盂蘭盆会の朝。

天草の西海岸では、ご先祖様をお迎えする13日の朝、
「迎えだご」と呼ばれるお団子を作って、仏壇にお供
えするのがならわしです。
を練って生地でくるみ、山から採ってきた丸い「だ
ごの葉」にのせて蒸し上げる。朝からシュンシュンと
音を立て、鍋からふきあげる蒸気を見るのが、子ども
ながらに楽しみで仕方がありませんでした。

ご先祖様の道しるべにと、縁側の軒先へ家紋入りの提
灯をぶら下げるのは、じいちゃんの仕事。最近ではろ
うそくを模した電球タイプの提灯が増えていますが、
かつてはリアルなろうそくを使っていたので、風で揺
れた拍子に炎がうつり、ボッと提灯が燃えあがったこ
ともありました。幸いすぐにおじが気づいて大事には
至りませんでしたが、ボロっと焼け焦げた提灯を見て、
怪談話のおばけ提灯みたいでおもしろいだなぁと子ど
も心に思ったものです。ご先祖様に怒られそうですね。

今朝も起き抜けに、提灯をぶら下げました。お団子も
作らなくっちゃと思っていたら、ベルが鳴り。玄関先
には、できたてアツアツの迎えだごを持って立ってい
る叔母の姿がありました。「仏さまにあげて」という
言葉に甘えて、お供えさせていただくことにしました。

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ご先祖さまのお迎えには、お墓掃除も必須!本来は、
お盆前に掃除に行かねばならぬところですが、仕事で
間に合わなかったので朝一番にお墓掃除へ・・・のつ
もりが、伯父たちが数日前に掃除をしてくれていたよ
うで、行ってみたら草も苔もなくなってお墓もピッカ
ピカ。手ぬぐいを首に巻きつけ、気合を入れて行った
のが、ちょっと恥ずかしくなりました(苦笑)。
少子高齢化が進むこの集落では、「墓守」に悩む家も
少なくありません。こうして、親戚同士で墓掃除の競
争ができるって、ありがたいことだなとつくづく思う
朝でした。

そんな肩すかしな墓掃除&台風対策の一足早めの墓ま
いりから帰ってみると、台所にはさっきまでなかった
袋がポンとおかれていました。ご近所の米作り名人さ
んからのお福わけ。「今年は稲刈りが少し遅れている
けど、せめて仏さまにあげる分だけでも」と、持って
きてくれたそう。そのお気持ちが心にしみました。


思いがけないギフトがいっぱいのこんな日は、頭の中
に「のさり」という言葉が頭に浮かびます。自然の恵
みや、思いがけないいただきものをしたときなど、天
からの授かりものに感謝するという意味を持つ言葉。
と同時に、思い通りにならないことに直面したときに
も使われる言葉です。

自分にとっていいことも、一見あまりよくないことも、
天からの授かりものとしてありがたく受け容れて、お
かれた場所で、あり方を模索する。真水に乏しく、平
たい耕地も多くないこの地に暮らす人たちの、生きる
姿勢を象徴する言葉のひとつです。

今夜はいただいたお米を炊いて、この地の恵みをつな
いでくれた、父や祖父母、曾祖父母、たくさんのご先
祖さまたちをお迎えしようと思います。

 

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