No.045 ひく

【No.045 ひく】

幼い頃、刺身をひく父の手元を、背伸びをしながらのぞきこむのが好きでした。その光景を記憶のなかから取り出しながら、見よう見まねでお刺身をひいていたこれまで。記憶ではシャッシャッと進んでいたことも、やろうと思うとなかなかうまくいきません・・・。「こんなに時間がかかってちゃ、ねまっちゃう(腐っちゃう)」と、自分で自分につっこんでいたことのひとつのが、皮をひく工程です。

漁師師匠の手元を見ながら何度もおさらいしていたら、重大なことに気づいたのです。これまで私は、皮と身を両方引いていた!(笑)あくまで、「皮をひく」なんですね。驚くことにこの工程ではほとんど、身に触れることはありません。包丁は刃を斜め下へ向け、ただ、そこにあてているだけ。おいしさの定義のひとつである「脂ののった魚」ほど、つるんとすべりやすいので、その対策として布巾やキッチンペーパーで尾側の皮をつかみ、「ひく」のがポイントなのだと知りました。

「刺身をひく」「魚の皮をひく」。そう。言葉がちゃんと示してくれていたのです。職人系の手仕事は「背中で学べ」とよく言うけれど、「言葉に学ぶ」ということも大切なのだとあらためて。まさに、「目からうろこ」の瞬間でした。

さてさて、私のお刺身修行はまだまだつづく。

[2020.06.08 芒種 初候 蟷螂生(かまきりしょうず/とうろうしょうず)]

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