草刈りマスターへの道

鎌を使ってみたり、立鎌を使ってみたり、あれやこれや
と試してみるものの、やっぱり文明の利器には勝てない
やと、いつも無力感を感じていました。

そう、草刈り機。

実家の周囲も高齢化率が高くなるにつれ、草が生い茂る
畑や空き地が目立つようになりました。まぶたの奥に浮
かぶ風景は、これまで地域の皆さんが畑に手を入れ、小
径の草を刈ってくれていたからこそ保たれていたものだ
ったのだと痛感したこの夏。

母が「除草剤を使う」なんて言い出さないように、でき
るだけ、時間を見つけて草取りをするようにはしていた
けれど。驚異の生命力と成長スピードを誇る夏の雑草に
は勝てるわけもなく。私の草取りでは追いつかない分を
ご近所さんや、母のお友達などが刈り取ってくださるた
びに、ありがたさと申し訳なさと、天草における無力感
を、ひそかに抱き続けていたのです。

今年こそは草刈り機デビューを果たしたい。そう思ってい
たところ、水俣で棚田保全活動をつづける「愛林館」の館
長 沢畑さんから草刈りレクチャーをいただけることに。
レクチャーだなんて何を大げさな。草刈り機なんて、すぐ
使えるでしょ!って思われそうだけど。これまで草刈り機
でケガをする方も多く見ているので、なんだか恐怖心の方
が強くって、自己流で使う気にはなれません。といって、
ただでさえ人手が足りないガチの草刈りのときに、何にも
できない状態で「教えてください」なんてスタンスも、申
し訳なさすぎる。草刈り機に一度も触ったことのない私の
ために、沢畑さんはなんと、特製のテキストまでご用意く
ださっておりました。

2サイクルと4サイクルの意味すらわからぬほどなのでエ
ンジンオイルとガソリンを混ぜて使うなんて、想像もつか
なかったけれど・・・いろんな衝撃を飲み込みながら、レ
クチャーは進んでいきます。

自分で使い始めたときのことを想定し、刃の交換時期の見
極めや、交換作業の仕方など、ひとつひとつ丁寧に教わり。
おそわるだけでなく、実際に自分で付け替えもさせてもら
いました。ドキドキした。そして、草刈り機の刃がこんな
ライオンの爪みたいなことになっていたということを、私
はこの日、初めて知りました。

ふと視線を感じて振り返ると、カエル。もしや君も呆れて
見ていますか?

スイッチを始動にして、アクセルを平行にして、紐を引っ
張ってエンジンをかけて紐をひっかけて・・・頭の中で手
順を復唱しながらやってみる。まるで自動車教習所みたい
ですが、エンジンがけにも不安がいっぱいだったので、な
んだかとても安心感がありました。

途中、機械の不具合が見つかったときにも、「ちょっと隣
の修理屋さんに」と難なく対応。車で1時間の距離にある
修理屋とか、電話のカスタマーセンターなどでもなく、頼
れる場所が近くにあることのありがたさを思うわけです。

いざ、草刈り実践へ!

ひととおり機械の使い方をマスターしたら、次は実践。現
場作業の快適性を高めるため、話題の扇風機付作業着(ひ
そかに憧れでした。着てみたかった!)と、水俣の無農薬
緑茶で作った水出し茶、それに網代傘をご用意いただいて
いました。感激!

ところでこの昔ながらの竹で編んだ網代傘、あらためて使
ってみるとむちゃくちゃ機能的!帽子と違って頭にペタッ
はりつかないので、日差しも軽減。この空洞を風が抜け、
頭皮の蒸れ予防にもなるらしい。一度のその快適さを知っ
てしまった以上、外の野良仕事には不可欠な存在となりそ
うです。

この日の実践現場は、何年も耕作断念地になっているとい
う棚田。(※「耕作断念地」とは、田畑の持ち主もちゃん
といて耕作したい意欲はあるけど、体力が追いつかなくな
って泣く泣く、耕作を断念せざるを得ない状態になってい
る土地、という意味だそう)。まずは平地の部分を少しず
つ刈らせてもらい、傍らで沢畑さんが気になる点をその都
度、指摘してくれます。館長自らマンツーマンの授業とか、
かなり贅沢です。

石に当たったら、石が飛んでくるんじゃないか。あるいは、
欠けた刃が飛んでくるんじゃないか。そんな「もしも」の
想像をしてしまうもので、なかなか地表すれすれに切ること
ができなかったけれど、「もっと短く」「もう少しスピード
あげて」と、その都度指摘していただき、どうにかこうにか
草刈りっぽくなってきた頃。次なる試練、もといステップア
ップ講座が用意されていました。

棚田のまわりを囲む石垣のそばを刈っていくというものです。
うーむ。石などの障害物に当たるのを恐れている私にとっては
なかなかの難題(汗)だいぶへっぴり腰になりつつ、挑戦。石
垣の草を放ったったままにしておくと、根っこがどんどんはび
こって、太くもなって、石垣が崩れる可能性もありますもんね。

どうにか一区切りついたところで、水俣産無農薬の緑茶を使
った水出し茶でひと息。そうそう、草刈り機って「振動障害」
というものもあるらしく、それを予防するためにも30分ごと
に休憩し、一日の作業時間は2時間以内とするというルール
があるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

棚田の保全活動と、水源涵養を行う森に広葉樹を植樹する
等の活動も続ける沢畑さんのマンツーマンの授業は、休憩
時の雑談も貴重なコンテンツのひとつ。周囲に広がる森の
様子を尋ねたり、棚田の機能や、中山間地ならではの悩み
を解消するために行ってこられたさまざまなお取り組みに
ついて、直に聞けるという魅力もあります。

石垣の上や横、下などの草刈りもそれなりにできるように
なったら、導入したばかりという自走式の草刈り機の体験
を。「ハンマーナイフローター」というらしい。なんだか
日曜朝の戦隊ヒーローものの変化する戦闘機として出てき
そうな名前だな。。。すごさがひしひしと。しかし、「こ
の刃で草をたたき切る感覚」といわれても、ちょっと想像
がつきませんが。

実際に使っておられるところを間近で見ていると、なるほ
ど!こういうことかというのがわかりました。

 

こんな風に細かく砕いた状態で出てくるので、畑にすき込
むことができ、緑肥にできるというのも、このタイプの草
刈り機のメリットらしい。なにより、人の背の高さほどに
もなった草もなんなく切ってしまえるって、すごい!

ということで、ギュギュッと濃密な草刈り研修を終え、ど
うにか、自分で草刈り機を持っても作業ができそうです。
しっかり学んだ後は、愛林館でシャワーをお借りしました。

愛林館のレストランで、特製タイカレーのランチなんぞも。
竹林被害で迷惑な存在になっている竹を、根こそぎやっつ
ける、タケノコたっぷりのタイカレー。添えられたお漬物
は、もちろん水俣名物の寒浸(かんづけ)です。大満足!

帰り道に見た、棚田の風景の神々しいことったら!!誰か
の日々のこうした仕事の積み重ねなんですよね。。。

この日もたくさんの学びをいただいた一日でした!

沢畑さん、本当にありがとうございました。
忘れぬうちに草刈り機を導入したいと思います。

Scroll Up