2年越しのデビュー!「漁師のリエット」

川端水産の「漁師のリエット」が、ようやくデビューを果たしました。商品開発の話が出はじめたのは2019年の夏のこと。この2年の間にさまざまな出来事があり、振り返るだけでもなんだか胸が熱くなります。商品の完成はゴールではなく、あくまでもスタートライン。ということで、ともに歩ませていただくなかで垣間見たものを少しだけ、綴ってみたいと思います。

漁師がリエットをつくろうと思った理由。

「末子が成人するまであと10年。このまま獲る漁業一本でやっていくのは、体力的にも経済的にも自信がない。しかも、頑張って獲っても市場に出せない魚がある。こういった魚をおいしくて使いやすい商品として、食卓に届けられないだろうか」。川端さんからそんな話を伺ったのは、2019年夏のことでした。

Ama-biZ(天草市起業創業支援センター)を通じてセッティングをいただき、「シャルキュトリPicasso」代表の松田悠佑さん監修のもと、スタートした「川端水産」の商品開発。現代の食卓を思い浮かべ、どんな商品ならどんなシーンに取り入れていただきやすいだろう?と検討を重ね、行き着いたのが「リエット」です。白身魚と炒めたタマネギを白ワインで煮込み、バターや香辛料を加えてペースト状にしたシンプルなフレンチ惣菜。選ぶ楽しみを提供するため、天草の代表的な産物でもあるアオサとうまみ節、そしてトマトという3種類の味わいのバリエーションを作ることになりました。

普段から、家族のために料理することもあったという川端さんですが、こうした商品開発は初めての経験。戸惑いながらも慎重に、テストキッチンで何度も試作を重ね、ようやく形になったのがこちらです。

2019年の9月、試作品の試食会を行うことになりました。せっかくならば、美味しいパンとの相性を確かめたい!と、急遽、ハード系のパンも手がける天草の「Boulangerie Pane(ブーランジェリーパーネ)」さんのパンを添えてみることに。この際、オーナーの田中宏典さんに趣旨をお話ししたところ、パンの作り手側からのご感想をいただけることになり、監修者の松田さん(写真右)と田中さん(左)を交えた試食会となりました。

味わいや食感、塗りやすさ、パンとの相性など、フレンチ料理人とパン職人の観点から率直なご感想をいただけたこの試食会。多少の改善点はあったものの、概ね好評で、川端さんはたしかな手応えを感じたようです。

以前から、漁業の傍らで少しずつ鮮魚やフィレなどの加工販売を始めていた川端さん。ですが、リエットを本格的につくるにあたっては、既存の加工所のリニューアルも必要でした。商工会や保健所に力添えをいただきながら、加工所の改装計画がつくられ、加工所の工事が始まりました。

加工所完成。いよいよこれから!
そんなとき、台風10号がやってきた

それから数ヶ月が経ち、加工所が完成し、保健所の許可もおり、ようやく本格製造を始められるぞ!と思った矢先の2020年9月2日。天草諸島に、台風9号がやってきました。東シナ海を北上したこの大型台風は、「中型定置網漁」を営む「川端水産」にも大きな被害をもたらしたのです。事前に備えはしたそうですが、川端さんの定置網の仕掛けは全壊。作業小屋なども損壊し、被害総額は500万円以上にのぼりました。

「一度は漁師を廃業することも脳裏をよぎった」という川端さんでしたが、家族会議の結果、再起を決意。人生初のクラウドファンディング に挑戦し、熊本はもとより各地から、多くのご支援をいただきました。
(※ご支援および拡散のご協力をいただきました皆様、その節は本当にありがとうございました)。

クラウドファンディングが終了したあと「まさかこんなにたくさんの人に応援してもらえるとは思ってもいなかった」と、涙ぐんでいた川端さんご夫妻。皆様からいただいたご支援を一円も無駄にしたくないと、臨時のヒラメ漁をつづけながらも、漁に出ない時間帯は四六時中、網の修繕を続けていました。風の日も、雪がちらつく寒い日も、漁港の一角にはいつも川端さんとお父さんの姿がありました。近くの漁師仲間たちが、軽口をたたきながらも手を貸してくれる様子に、漁師たちの絆を感じました。

料理王国100選2021認定!
パッケージデザインの進化へ。

そんなとき、うれしいニュースが飛び込んできました。国内でも名だたるトップシェフが品評する「料理王国100選2021」の加工食品部門の認定商品として、川端さんのリエットが選ばれたという知らせです(応募した時期はまだ加工所の整備も終わっていなかったこともあり、出品にあたっては「クリエーションWEB PLANNING」の深川沙央里さんにもご協力をいただきました)。

この知らせは、川端さんご一家にとって大きな励みになりました。「仕掛けの修理が終わるのはまだまだ先だけど、本格的に漁を再開できる日が来たら、その魚を使っておいしいリエットをつくりたい。食卓へ届けたい。リエットを通じて天草の海を、漁師の営みを知っていただきたい」。そんな思いを共有し、しっかりとお届けするために、パッケージの見直しを行うことになりました。

今回、パッケージ デザインの制作をお願いしたのは、アートディレクターの吉本清隆さん。阿蘇や水俣、八代、八女など、地域のつくりてさんに寄り添ったロゴやプロダクトデザインを手がけるデザイナーです。「現地を見て、しっかりお話をしたい」と、吉本さんが「川端水産」のある入江を訪ねてくれたのは、1月14日のこと。ふたりは初対面ではあったものの、吉本さんと話す間にいろんな未来予想が広がったらしく、気づけば少年のように嬉々とした表情で話し始めていた川端さんの姿を、今も忘れることができません。

デザインの力を確信した瞬間でした。

いつもなら定置網が仕掛けられているはずの漁場を見下ろす高台へも足を運び、川端さんの今後の方向性なども含めてヒアリングをした吉本さんは、早速、構想に着手。幾度かのやりとりを重ねながら、出来上がったのがこちらのパッケージです。

(以下、吉本清隆さんのFB投稿より抜粋)
天草、「川端水産」様のロゴ、パッケージ担当しました。ご家族のこと、地域のこと、将来へ引き継ぐこと、等を川の字に込めました。海なんだけど、川です。

川端水産さんの「川」と四季折々の魚をモチーフにしたロゴは、愛らしさだけでなく、今にも動き出しそうな活きの良さも感じます。売り場での伝わり方、冷凍ストックのしやすさなども考えられたデザインです。こうしてようやく、正式な商品となった「漁師のリエット」。魚を気軽に食卓で楽しんでいただけ、ギフトにも使い勝手の良い商品として、ご提案をはじめています。おうち時間に彩りを添える一品としてもおすすめです。

ちなみに、「川端水産」の加工品シリーズとして展開予定の「IWO」。その語源となった「イヲ」は、天草の方言で魚を意味する言葉。これを皮切りに、食卓と海をつなぐ漁師のプロダクトが少しずつ広がっていきそうな予感です。

なお、川端さんは漁と加工に専念いただくため、漁師のリエットの取り扱いやお問い合わせは、シマノタネ までご連絡ください。必要に応じてお取り次ぎさせていただきます。

<追記>

ちなみに、現在書店で販売中の「料理王国6月号」にも掲載されています。
よろしければご一読ください。